実は、海苔という食べ物は大昔から日本でよく食べられていた食材の一つだ。飛鳥・奈良時代に柿本人麻呂(かきのもとのひとまろ)が、
向津(むこうづ)の奥の入江のささ浪に のりかく海士(あま)の袖は濡れつつ
と詠い、室町後期には宗祇が
むかふ津ののりかく海士の袖に又 思はずぬらすわが旅衣
と詠ったという。その他にも多くの一流の俳人達が、海苔についての名句を残しているそうだ。また、詩歌や川柳も詠じられていったそうだ。その時
代、日本人が海苔を食べている姿を見た米人は、自国に帰り「日本人は木と紙の家に住み、黒い紙を食べていた。」と言っていたらしい。
この時代の海苔は、みんなが食べることのできる庶民の味ではなく、位の高い人しか食べることのできない、超高級品だったらしい。
軽食品としての性質上、酒肴、茶請に最も適しており、海苔巻すしの流行は天明の頃から続いている。
こうして少し見るだけでも、海苔はとても趣深い食べ物であり、爽やかな香りが鼻をつく感じ、また、これを口に入れた瞬間のパリパリとした食感、
舌の上で自然にとろけていく感じは、いつの時代の人々も虜にしてしまうことが分かる。